間宮林蔵の見たギリヤクの性生活

3.性 生 活

 林蔵はギリヤクの性生活が自由であり,女性が色気たっぷりであることを指摘している。たとえば,ギリヤクの女性「其情蝦夷島女夷と大に異にして,相識ラさる人といへ共能馴泥し,言語通ぜざれば其云処瞭然ならずといへ共,時気寒暖の応接などなし,いかにも娩情妖態多ク,男子に接するのさま親意殊に深しと云」。この引用文の末尾に「と云」とあるのは,記述した村上貞助が「林蔵がそう語った」という意味で書いたものである。

 この部分のシーボルト訳は,(彼女たちはもてなしがよく親切で,会う人は誰でも,未知の人さえも歓迎する)であるが,どういうわけか「腕情妖態多く… … 」以下の部分が脱落している。

 林蔵はまた別のところで,「男女多淫の俗習なれば姦通邪淫の事許多也」と語っている。
 シュテルンベルグによると,
ギリヤクにおいては性的感情がわりあいよく発達している
 ギリヤクの生業がいわば季節的漁携であって,余暇が多いこともその理由の一つとしてあげられよう。
 また狭い住居(住居については後にのべる)の中に数家族が住んでいることも早熟の原因であろう。

 ナナイ人の作家ホッドジェルの小説の中に,アゴアカというナナイの娘の結婚初夜の状況がつぎのように描写されている。アゴアカは,ウルスカ(新夫の名)が彼女の毛布に入ってきたとき,恥かしそうに身をちじめ,体をこわばらせた。彼女はその夜幸せであった。兄弟たちが彼女のそばで,夜ごとにその妻たちを可愛いがる様子を見て気持をたかぶらせ,早熟になり,早くから自分が女であることを感じていた彼女は,この夜,自分の夫を愛し,彼に身をすり寄せ,そのぬくもり,力,耐久力にひたりきった」。
ナナイとギリヤクは,いうまでもなく,場所によっては混住し,生活様式の面でも多くの点で共通している。

 ギリヤクの男性は成人と同時に性生活をはじめ,
その余暇と想念のほとんどが女性に向けられた。
 
それに,誰も彼もが結婚できるわけではなかった。
 
 つまり多夫一妻と同時に一夫多妻の風習もあり
,婚資(kalym)
がなければ嫁をもらうことができなかった。
 
 そこで独身の若者たちは,自分の部落の手の届く女性だけでなく,時間と距離にかかわりなく,
女性を求めてよその部落に出かけて行った。

 ギリヤクは本来客好きであり,いろいろなニュースを知りたがったので,よそ者でも歓迎された。
 「新来の客人は到着後数時間のうちに部落じゅうの家々をまわり,自分のもってきたニュースを語る。男も女もこれに熱心に耳をかたむける。客人はその間に,そこにいる女性に目をつける。それ以後は彼の経験とテクニックがものを言うことになる。客人がある程度彼女の気に入る男であれば,
ことは急速に進行した。
 男は女が水場や木の実とりに出て行くのをつけて行ったり,いきなり物かげでつかまえたりした。
また例えば,「煙草をいっしょに吸おう(同じ煙管で交替に吸うこと)」とか,「ニュースを話そう」とかいうような象徴的な言葉で話しかけることもあった。ここで内諾が得られれば,客人はそこに一泊したとき,夜半彼女の寝床に行ったり,その反対であったりした。言葉をかけないで,男が女の胸や足にさわって抵抗をうけなかったら,それで女の諒承が得られたことを意味したという。
 既婚女性の場合には,もともと好きで結婚したわけではなく,それに年齢的にも女性が若すぎたり,あるいは複数妻であったりする場合が少なくなかったことも,自由な性関係の理由であろう。

 未婚男女の場合はもっと自由であった。シュテルンベルグは,ピグルナイカという未婚の一女性,自分の未来の夫を含めて同時に14人の愛人と交渉をもっていたとつたえている。

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