宮沢賢治の詩 原体剣舞連(はらたいけんばいれん)

原体剣舞連(はらたいけんばいれん)

           (mental sketch modified)


 この詩は、賢治が1922年8月30日から31日にかけ種山ヶ原に地質調査に出かけたおり、下山途中で田原村原体(現・奥州市江刺区田原)で見た民俗芸能・原体剣舞を見たことが元になり、『春と修羅』に「原体剣舞連(はらたいけんばひれん)」という詩を作り収めた。

 原体剣舞は踊り手に「信坊子」「信者」「亡者」の役の全てを子供達が演じ、その純真無垢で清らかさにより先祖の霊を鎮めようと伝えられてきた念仏踊り(鬼剣舞)の一種と思われる。  


   dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah

   こんや異装(いさう)のげん月のした

   鶏(とり)の黒尾を頭巾(づきん)にかざり

   片刃(かたは)の太刀をひらめかす

   原体(はらたい)村の舞手(おどりこ)たちよ

   鴇(とき)いろのはるの樹液(じゆえき)を

   アルペン農の辛酸(しんさん)に投げ
   生(せい)しののめの草いろの火を
   高原の風とひかりにさゝげ
   菩提樹皮(まだかは)と縄とをまとふ
   気圏の戦士わが朋(とも)たちよ
   青らみわたる顥気(かうき)をふかみ
   楢と椈(ぶな)とのうれひをあつめ

   蛇紋山地(じやもんさんち)に篝(かがり)をかかげ

   ひのきの髪をうちゆすり
   まるめろの匂のそらに
   あたらしい星雲を燃せ

   dah-dah-sko-dah-dah

   肌膚(きふ)を腐植と土にけづらせ
   筋骨はつめたい炭酸に粗(あら)び
   月月(つきづき)に日光と風とを焦慮し

   敬虔に年を累(かさ)ねた師父(しふ)たちよ

   こんや銀河と森とのまつり

   准(じゆん)平原の天末線(てんまつせん)に

   さらにも強く鼓を鳴らし
   うす月の雲をどよませ

     Ho! Ho! Ho!

        むかし達谷(たつた)の悪路王(あくろわう)

        まつくらくらの二里の洞(ほら)

        わたるは夢と黒夜神(こくやじん)

        首は刻まれ漬けられ
   アンドロメダもかゞりにゆすれ

        青い仮面(めん)このこけおどし

        太刀を浴びてはいつぷかぷ

        夜風の底の蜘蛛(くも)おどり

        胃袋はいてぎつたぎた

     dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah


   さらにただしく刃(やいば)を合(あ)はせ

   霹靂(へきれき)の青火をくだし

   四方(しはう)の夜(よる)の鬼神(きじん)をまねき

   樹液(じゆえき)もふるふこの夜(よ)さひとよ

   赤ひたたれを地にひるがへし
   雹雲(ひやううん)と風とをまつれ

     dah-dah-dah-dahh
   夜風(よかぜ)とどろきひのきはみだれ
   月は射(ゐ)そそぐ銀の矢並
   打つも果(は)てるも火花のいのち
   太刀の軋(きし)りの消えぬひま

     dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah

   太刀は稲妻(いなづま)萓穂(かやぼ)のさやぎ

   獅子の星座(せいざ)に散る火の雨の
   消えてあとない天(あま)のがはら
   打つも果てるもひとつのいのち

     dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah

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