トルストイの短編詩から 「忘れずやマリヤの君」

忘れずやマリヤの君よ

古びたる一つの家を

まどろめる池の上なる

いく世へし菩提樹の木を



しじまなる並木の道を

ものさびて古りにし苑(その)を

いと高き廊なる壁に

姿絵のかけつらねしを?



忘れずやマリヤの君よ

たそがれのみ空の色を

目路の果てひろごる野もを

遥かなる村寺の鐘を?



苑のそとせせらぎ走る

静かなる清き小川を

黄金なす麦穂の中に

うち交じる矢車菊を?



また君とはじめて二人

さまよひし森の小道を?

忘れずやマリヤの君よ

失はれたる日のかずかずを?

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